2024/07/17 [ むし歯治療, 予防歯科, 歯の知識 ]
皆さんは酸蝕症(さんしょくしょう)という疾患を知っていますか?酸蝕症は、酸性の飲食物や胃酸の逆流によって歯のエナメル質が溶ける状態です。
夏は海やバーベキューなど楽しみが多く、ついついジュースや炭酸飲料を口にすることも多いのではないでしょうか。実はこれらには酸が多く含まれており、酸蝕症を引き起こす原因になることも。
本記事では、酸蝕症とはなにか、原因と予防法について解説します。夏の楽しみを満喫しながら歯の健康も守っていきましょう。
酸蝕症とは、酸によって歯の表面が溶けてしまう病気です。
歯の表面はエナメル質という人体で一番硬い組織で覆われていますが、実は酸には弱いという性質があります。そのため、酸性の飲食物を過剰に摂取すると、エナメル質が少しずつ溶かされてしまうことがあります。
初期の酸蝕症は歯の表面が白く濁ったり、ツヤがなくなったりする程度で自覚症状がない場合も多いです。しかし、放置すると歯がさらに薄くなり、冷たいものがしみたり、歯が欠けたりすることもあります。
また、歯のエナメル質の下には象牙質という黄色い組織があり、エナメル質が溶けることでこの象牙質が透けて見え、歯が黄色く見えることもあります。さらに酸蝕症は虫歯のように穴があくわけではないので気づきにくいのも特徴です。
「歯が溶ける」と聞くと、「虫歯じゃないの?」と思うかもしれません。虫歯も酸蝕症も歯が溶ける病気ですが原因は全く異なります。
虫歯は、お口の中にいる虫歯菌が糖分をエサにして酸を出し、その酸によって歯が溶かされる病気です。甘いものを食べ過ぎたり、歯磨きが不十分だと虫歯菌が増殖しやすくなります。
一方、酸蝕症は、食べ物や飲み物に含まれる酸によって歯が溶かされる病気です。酸性の強い柑橘類や炭酸飲料、スポーツドリンクなどを頻繁に摂取したり、胃酸の逆流があると酸蝕症のリスクが高まります。
自分で虫歯と酸蝕症を見分けるのは難しいです。少しでも気になる症状があれば、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。
酸蝕症は、工場などで働く人が酸性ガスを吸い込むことで発症する職業病と考えられていました。しかし、現在では私たちの身近なところにも酸蝕症を引き起こす原因が潜んでいることがわかっています。原因は大きく「外因性」と「内因性」の2つに分けられます。
毎日の食事が知らず知らずのうちに歯を溶かしているかもしれません。特に、以下の酸性の強い飲食物は要注意です。
黒酢や柑橘類、梅干しは健康に良いイメージですが、酸が強いので食べ過ぎには注意しましょう。
体の中から出てくる酸によっても、歯が溶けてしまうことがあります。
過食症や拒食症の人は、嘔吐を繰り返すことで胃酸が口の中に触れる機会が増え、酸蝕症のリスクが高まります。
酸蝕症は、年齢を問わず誰にでも起こりうる病気ですが、酸性度の高い清涼飲料水やスポーツドリンクを頻繁に摂取する若い世代に増えています。
ジュースや炭酸飲料など、酸性の飲み物を好む傾向があります。また、歯のエナメル質がまだ未成熟なため酸の影響を受けやすいです。
仕事や家事、育児などで忙しい世代は、ストレスや不規則な食生活になりがちです。それにより、胃酸が逆流してしまうと酸蝕症を引き起こしてしまう可能性があります。
加齢や薬の副作用などで唾液の分泌量が減少し、酸を中和する力が弱まるため酸蝕症を引き起こすリスクが高くなります。
健康のためにと積極的に黒酢や柑橘類、ビタミンCサプリメントを摂取している人も多いですが、過剰摂取は酸蝕症の原因となる可能性があります。
ダイエットや美容目的で無糖の炭酸水やレモン水を頻繁に飲む人もいますが、これらも酸性度が高いため注意が必要です。
酸蝕症は、毎日のちょっとした心がけで予防できる病気です。ここでは、酸蝕症の簡単な対策を紹介します。
これらの対策を毎日の習慣に取り入れてみましょう。
酸蝕症の治療は、症状の進行度によって異なります。初期の段階では歯の再石灰化を促す薬剤やフッ素塗布が行われます。
症状が進行している場合は、しみ止め効果のある薬剤を塗布したり、レジンと呼ばれる歯科用プラスチックで歯を補う「コンポジットレジン充填」という治療が行われることがあります。
重度まで進行し、歯が大きく削れたり、欠けたりした場合は、「クラウン」と呼ばれる被せ物で歯全体を覆う治療が必要です。
酸蝕症の原因は食べ物や飲み物など、身近なところに潜んでいます。しかし、酸性の飲食物を控える、食後に口をゆすぐなど、少しの心がけで予防できる疾患です。
また、定期的な歯科検診も忘れずに受け、早期発見できれば、進行を予防したり簡単に治すこともできます。
今年の夏は、歯の健康を意識して過ごしてみましょう。