2024/11/29 [ 歯の知識 ]
秋になり、乾燥が気になる時期になってきました。気温が下がり、子どもの体調管理に一層気を配りたい季節ですね。
風邪やインフルエンザが心配になりますが、秋はブタクサやヨモギなどの花粉によるアレルギーにも要注意な時期です。
実は、子どもが鼻呼吸をせずに口呼吸をする「お口ポカン」を引き起こす原因に、アレルギーが大きく関わってることを知っていましたか?
本記事では、お口ポカンの危険性とアレルギーの関係について説明します。
「お口ポカン」という言葉を、お子さんを持つ方であれば一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。お口ポカンとは、日常的に口が開いている状態で、専門的には「口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)」といいます。
日本人の子どもたちの 3人に1人が日常的にお口ポカンをしているという調査結果があります。
また、マスクの着用が日常化し、鼻呼吸よりも口呼吸をする機会が増え、口の周りの筋肉が低下し「お口ポカン」の状態になってしまう子どもが増加しているのです。
「口から息を吸っても、鼻から息を吸っても変わらないでしょ?」と思うかもしれません。しかし、鼻呼吸と口呼吸では体に取り込む空気の質も体への影響も全く異なります。
鼻呼吸は、鼻から空気を吸い込む呼吸方法です。空気中にはさまざまな細菌やウイルス、ゴミなどが存在します。鼻の内部には自然な空気清浄機と加湿器の機能が両方備わっているため、鼻呼吸の方が感染症に罹るリスクが少ないといわれています。
鼻毛は外から侵入しようとする花粉やホコリなどをブロックし、鼻腔粘膜はより小さな異物を絡めとってくれます。そのおかげで、体内に綺麗な空気を取り込むことができるのです。
また、鼻から吸い込んだ空気の温度や湿度を一定にしてから体内に取り込むことができるため、肺の負担を軽減することができます。
口呼吸は、口を開けて空気を吸い込む方法です。口腔内にはフィルター機能が無いため、空気中のウイルスやホコリなどを直接気道に取り込んでしまいます。
さらに、空気を直接吸い込むことで口腔内が乾燥し、病原菌が繁殖しやすい状態に。口呼吸は鼻呼吸に比べ、感染症にかかるリスクが高くなるのです。
子どもは鼻から呼吸がしづらくなると、口呼吸に頼ってしまいます。お子さんがお口ポカンをしているのは、アレルギーで鼻が詰まっているせいかもしれません。
アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻から侵入し、免疫反応が起こることで鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状を引き起こす病気です。アレルギー性鼻炎には、季節性と通年性があります。季節性は、スギやイネ科などの花粉の飛散時期にだけ症状が起こるものです。通年性は、ダニやハウスダストが原因になって引き起こされるもので、1年を通して症状が現れます。
アレルギー性鼻炎による鼻詰まりは長く続いてしまうことが多いため、口呼吸を習慣化させてしまいます。
お子さんにアレルギー症状が見られたら、耳鼻科にかかり、きちんと相談しましょう。
口呼吸は、歯並びや噛み合わせを悪くさせます。上顎の前歯の裏側に「スポット」と呼ばれるスペースがあり、会話や食事をしている時以外は、ここに舌を置いておくことが理想的な状態です。スポットに舌が置かれてる時は、必然的に鼻呼吸になります。
そして、舌が歯に触れるときにかかる内側からの力と、口を閉じている時に頬や口周辺の筋肉が歯を締め付ける外側からの力のバランスが整い、U字型のアーチの歯並びを保つことができるのです。
しかし、口呼吸になると、舌の位置が下顎の方に下がり、スポットに置かれなくなります。力のバランスが崩れ、上顎と下顎が狭くなるという現象が起きます。その結果、並びがV字型になる、出っ歯になる、反対咬合になるなどの症状が出てくるのです。
口の周りを円状に囲んでいる筋肉を「口輪筋」といいます。口輪筋は口を閉じる筋肉です。口呼吸は口が開きっぱなしになると同時に舌の位置も下がり、筋力がが使われなくなるため口輪筋が衰えてしまいます。
口輪筋が衰えると口が開きやすくなり、無意識に口呼吸することが増え、さらに口輪筋が衰える、という悪循環を生み出してしまうのです。また、顔が伸びて変わって見えてしまうこともあります。
鼻呼吸が深くてゆっくりとした呼吸なのに対し、口呼吸は浅くて速い呼吸になります。浅くて速い呼吸はアドレナリンの分泌を促すため、身体がマラソンをしている時のような緊張状態になります。そのため、口呼吸をしていると、落ち着きが失われてそわそわし、集中力が続かなくなるのです。
口呼吸は、唾液の分泌量を減少させ、ドライマウス(口腔乾燥症)を引き起こす可能性があります。
唾液には細菌を洗い流す自浄作用と、虫歯や歯周病を引き起こす菌の増殖を抑える抗菌作用がありますが、ドライマウスになると口腔内でのこれらの唾液の利点が失われてしまうため、虫歯や歯周病になるリスクが高まってしまいます。
さらに、唾液の減少により歯垢が溜まりやすくなったり、細菌の繁殖が進むことで口臭を発生させてしまうこともあるのです。
お口ポカンの改善には、歯科だけでなく耳鼻科でのアプローチも必要です。アレルギーや鼻づまりといった原因を明らかにし、適切な治療を行うことで鼻呼吸の習慣化がスムーズになりますよ。
歯科医の立場からは、お子さんの綺麗な歯並びや健康のために、定期的な検診を受け、早期の対策を取ることが重要だと考えています。ぜひ、わたしたちと一緒にお子さんの健康のための取り組みを始めましょう。