2024/12/28 [ 歯の知識 ]
虫歯や神経の治療(根管治療)を経験された方の中には、「コア」や「土台」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。コアは歯を補強し、被せ物を支えるための土台のことです。虫歯や根管治療で大きく削った歯はもろくなっているため、コアで補強する必要があります。
実は、このコアの選択が治療後の歯の健康状態や被せ物の寿命を大きく左右します。今回は、メタルコアとファイバーコアの違い、土台選びのポイントについて解説します。
歯の土台(コア)は、根管治療で内部を空洞化した歯に人工的な材料を詰めて、被せ物を支えるものです。
コアは歯の強度を回復させて、食事の際にしっかりと噛めるようにする、とても重要な部分。もし、この土台が適切に作られていないと、被せ物が外れやすくなったり、最悪の場合、残った歯根が折れてしまったりするリスクが高くなります。
歯の土台となるコアには、大きく分けて「メタルコア」と「ファイバーコア」の2種類があります。それぞれ素材や特性が異なるため、ご自身の歯の状態に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
メタルコアは、金属で作られた土台です。メタルコアのメリットは、高い強度。噛む力が強くかかる奥歯でも、しっかりと支えてくれます。また、金属は加工しやすいため、歯の形にぴったりと合わせやすいのも大きな特徴です。そして、メタルコアは保険が適用されるため、比較的費用を抑えて治療を受けられます。
しかし、メタルコアには注意すべき点も。金属は非常に硬いため、逆に歯根へ過剰な負担をかけてしまう可能性があるのです。また、金属イオンが溶け出して歯茎が黒ずんでしまうこともあります。さらに、金属アレルギーをお持ちの方は、アレルギー反応が出るリスクがある点にも注意が必要です。
ファイバーコアは、ガラス繊維を束ねて樹脂で固めた柔軟性のある土台です。歯根への負担を軽減できることに加えて、光を通す性質があるため被せ物をした際に天然歯のような透明感を再現できるというメリットがあります。
そのため、見た目を重視する前歯の治療によく用いられています。さらに、金属を一切使用していないため、金属アレルギーの心配もありません。
ただし、ファイバーコアはメタルコアに比べると強度がやや劣るため、強い力がかかる部位には適さない場合があります。また、自費診療となるため、メタルコアに比べて治療費が高額になる場合があります。
メタルコアやファイバーコアなど、どちらを選べば良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。ここでは、土台選びのポイントを解説します。
土台に使用する歯の位置や求める機能によって最適な素材は異なります。
たとえば、奥歯のように強い噛む力に耐える必要がある部位は、頑丈なメタルコアが適していると言えるでしょう。一方、前歯など、見た目の美しさが重視される部位は、ファイバーコアが適しています。
また、歯根が弱っている場合は、ファイバーコアのほうが歯根にかかる力を優しく分散してくれます。
土台選びは歯の状態だけでなく、予算なども考慮して選ぶことも大切です。ファイバーコアは自費診療となる場合が多いため、経済的な負担も考慮する必要があります。長期的な視点で自身の価値観に合った土台を選びましょう。
土台は一度装着すると、簡単にやり直しがききません。金属アレルギーのリスクがある方は、メタルフリーのファイバーコアを選ぶのが安心です。
メタルコアとファイバーコア、それぞれにメリット・デメリットがあることがお分かりいただけたでしょうか。どちらが優れているというわけではなく、ご自身の歯の状態や、何を重視するかによって、最適なコアは異なります。将来的な歯の寿命や健康にも大きく関わりますので、自己判断せず、必ず専門医に相談し、よく話し合った上で決めることが大切です。