2024/08/30 [ お子さんの歯の治療, 子供の治療, 歯の知識 ]
検診のとき、5~6才頃のお子さまを持つ保護者から「前歯の乳歯が抜けていないのに、その裏側から歯が生えてきた!」と言われることがあります。同じような経験をされて心配になっている方もいるかもしれません。
これは「晩期残存(ばんきざんぞん)」と呼ばれるものの可能性があります。本記事では晩期残存がどのようなものなのか解説していきます。
子供の歯は、いつの間にか大人の歯に変わっていますよね。乳歯がどのようにして生え変わるのか知らない方も多いと思いますので、そのメカニズムを解説します。
まず、乳歯の下には将来生えてくる永久歯の芽「歯胚(しはい)」があり、少しずつ成長していきます。この永久歯の歯胚が成長に伴い、乳歯の根っこが吸収(溶けてしまうこと)され始めます。それにより、乳歯がグラグラと揺れ動いて、最終的には抜け落ちてしまうのです。
そして、その空いたスペースに永久歯が生えてきます。
年齢 | 抜ける乳歯 | 生える永久歯 |
---|---|---|
6~7歳 | 下の前歯 | 下の前歯、第一大臼歯 |
7~8歳 | 上の前歯 | 上の前歯 |
9~10歳 | 上下の犬歯、小臼歯 | 上下の犬歯、第一小臼歯 |
11~13歳 | 残りの小臼歯 | 第二小臼歯、第二大臼歯 |
17~21歳 | – | 親知らず(第三大臼歯) |
乳歯が抜けるのは、6~12歳の間です。しかし、これはあくまでも目安で、遺伝や歯の成長の状況により個人差があります。そのため、周りの子と比べて少しくらい遅くても、あまり気にする必要はありません。
永久歯が生え始めるのは6歳頃からです。そして、14歳頃には親知らずを除く永久歯が生え揃い、全部で28本の歯がお口に並びます。
乳歯が抜けた後、永久歯は空いたスペースから生えてこようとします。あごの成長に合わせて歯の位置を調整しながら生えてくるので、この時期の歯並びチェックが大切です。
乳歯の晩期残存とは、永久歯が生えてくる準備が整っているのに、乳歯がなかなか抜けない状態のことです。上記でも解説した通り、乳歯は6歳頃~12歳頃にかけて抜け落ち、永久歯に生え変わります。しかし、何らかの理由で12歳を過ぎても乳歯が残ってしまうこともあります。
乳歯の晩期残存の原因は、いくつかあります。まず、生まれつき乳歯の根っこが溶けにくい、歯の成長がゆっくりなど、遺伝や歯そのものの問題が原因となることがあります。
また、あごの骨の成長や永久歯の位置が影響することも。たとえば、永久歯が本来生えてくるべき場所からずれてしまうと、乳歯を押し出すことができず、結果として乳歯が残ってしまうことがあるのです。
さらに、あごの骨の成長が遅いと、永久歯が生えてくるスペースが十分に確保できず、乳歯が抜けるタイミングが遅れることがあります。
上記以外にも、外傷や病気、指しゃぶりなどの癖が原因となることもあります。
乳歯晩期残存は、見た目の問題だけでなく、以下のような悪影響を及ぼす可能性があります。
乳歯がいつまでも残っていると、永久歯が正しい位置に生えてこられず、歯並びがガタガタになってしまうことがあります。また、スペースが足りなくなって、歯が重なったりガタガタになったりすることも。
永久歯が正しい位置に生えてこないと、噛み合わせが悪くなることがあります。すると、食べ物をうまく噛めなくなったり、顎の関節に負担がかかって痛みが生じることも考えられます。
乳歯と永久歯の間に隙間ができると歯ブラシが届きにくく、汚れが溜まりやすくなります。虫歯や歯周病のリスクが高まり、口臭の原因にもなりかねません。
治療法は、お子さまの歯の状態によって異なります。乳歯が永久歯の邪魔をしている場合は、抜歯が必要になることも。また、歯並びを整えるために矯正治療を行う場合もあります。
乳歯がいつまでも残っていると、永久歯が変な方向に生えてきたり、歯並びが悪くなってしまうこともあるので、乳歯の生え変わりに違和感を感じたら、ためらわずに歯科医師に相談しましょう。
晩期残存は、乳歯が正常に抜けず、永久歯がうまく生えてこない状態です。放っておくと、歯並びが悪くなったり、噛み合わせに問題が生じたりする可能性があります。
原因はさまざまですが、早期発見・早期治療が大切です。定期的な歯科検診を受け、気になる症状があればすぐに相談しましょう。
当院ではレントゲン撮影などを行い、永久歯の有無や位置を確認し、必要に応じて抜歯や矯正治療などご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください。