先日、Twitterで「歯を磨くときに歯ブラシを濡らすかどうか」という議論が盛り上がったようですね。皆さんはどちらの方法で磨いていますか?
実は、歯ブラシを濡らすと、しっかり磨いているつもりでも磨き残しが多発する可能性があります。
濡らさずに磨く方がよいと考えられています。
そこで本日は、正しい歯磨きの方法をご紹介します。
むし歯や歯周病を予防するためには、磨き残しを減らすことが重要です。なぜなら、磨き残しがあると、そこに細菌が繁殖して歯垢が形成され、むし歯や歯周病の原因になるからです。
歯垢とは、歯の表面に付着する白っぽい色をした細菌の塊のことで、その中にはむし歯菌や歯周病菌などが存在しています。しかし、歯ブラシだけでは約61.2%の汚れしか取り除くことができないという調査結果があります。そのため、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助的清掃用具を併用し、効果的に歯垢を除去する必要があります。
ある研究では、歯ブラシとデンタルフロスを併用することで、約79.0%の汚れを取り除けることがわかりました。また、歯ブラシと歯間ブラシを併用すると、約84.6%の汚れを取り除くことができるといわれています。ここでは、磨き残しを減らす正しい歯磨きの方法を紹介します。
参照:高世尚子 他 歯間清掃具によるプラーク除去効果の臨床的検討 日本歯科保存学雑誌(2005).48巻2号,272-277
歯ブラシを持つ際は、ペンを持つように持つことです。なぜなら、強く握ってゴシゴシと磨くと歯ブラシの毛先が広がり、磨き残しが増えてしまうからです。さらに、過剰な力で磨いてしまうと歯茎が下がり、知覚過敏の原因になる可能性もあります。特に、歯ブラシをあてると歯がしみるという方は注意が必要です。
歯ブラシは濡らさずに、適切な量の歯磨き粉を使用しましょう。以下は目安となる量です。
この量について、少ないと感じる方もいるかもしれません。しかし、多くの歯磨き粉を使用すると、爽快感や泡立ちによって磨いた気になりやすくなります。そのため、泡立たないタイプやジェルタイプの歯磨き粉を使用すると良いでしょう。
歯ブラシはあてる角度が重要です。頬側の歯面には、歯ブラシを90°の角度であてるようにしましょう。歯垢や汚れを効果的に取り除くことができます。
舌側は毛先を歯と歯茎の間にあてると良いです。また、歯と歯茎の境目は45°の角度にあてると、歯の根元の汚れを効果的に除去することができます。ただし、これらの動作を行う際は、力を入れずに歯ブラシを小さく小刻みに動かすことが重要です。
磨き忘れがないように順番を決めることも大切です。たとえば、右上の奥歯から順に前に進み、上の前歯→左上の奥歯→左下の奥歯→下の前歯→右下の奥歯といった順番で磨く方法があります。ポイントは、一筆書きのように歯を磨くことです。
また、歯ブラシは清潔に保つために1ヶ月に1回は交換しましょう。
鏡を見ながら歯と歯の間に歯間ブラシをゆっくりと挿入します。歯の両側面を約5回程度往復させるようにこすります。このとき、力を入れずに優しく行いましょう。舌側からも同様の手順で歯間ブラシをあてます。
歯間ブラシは、4S~Lと幅広いサイズがあります。メーカーによっても異なるので、歯科衛生士と相談して自分に合ったサイズを選ぶことが大切です。
デンタルフロスとは、糸ようじのことを指します。歯間ブラシでは入りにくい歯と歯の間に使用するのが適しています。フロスは持ち手がついているものや糸巻き状のものがあるので、自分が使いやすい方を選びましょう。ここでは、糸巻き状の使い方を紹介します。
まずフロスを40cm程度の長さに切ります。次に両手の中指にフロスを巻き付け、15cm程度の長さにしてピンと張ります。親指と人差し指でフロスを2~3cm程度になるようにつまみ、歯と歯の間にゆっくりと入れます。歯の両側面を片面ずつ沿わせるようにこすりながら、汚れを落としていきましょう。
タフトブラシは、毛先が一束になっている小さな歯ブラシのことです。主に奥歯の後ろや、歯並びが悪くて通常の歯ブラシでは届きにくい箇所に適しています。
歯ブラシで磨いた後にタフトブラシを使うことで、歯垢除去率が向上します。特に、以下の部位にタフトブラシを使用しましょう。
歯ブラシを濡らすか濡らさないかの議論がありましたが、結論は歯ブラシを濡らすと磨き残しが多発する可能性があるため、濡らさずに使う方が効果的です。しかし、大切なことは毎日の歯ブラシと定期検診を組み合わせることです。それにより、むし歯や歯周病予防や早期発見・早期治療につながります。当院では、患者さん一人ひとりに合った、正しいブラッシング方法をお伝えしています。3ヶ月に一度を目安に、ぜひ定期検診へお越しください。