2023/08/18 [ 予防歯科 ]
歯科医院の定期検診で「歯周病」と指摘されたことはありませんか?
日本人が歯を失う原因で最も多いのは歯周病です。年齢を重ねるにつれて罹患率が増加し、30歳以上の3人に2人が歯ぐきの炎症や深い歯周ポケットなど、歯周組織に問題を抱えています。80歳を超えても20本以上の歯が残っている人は少なく、80~84歳の人が15.3本、85歳以上の人が10.7本という結果が厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」によりわかっています。
一方、予防歯科先進国フィンランドやスウェーデンでは、虫歯や歯周病が少ない国と知られており、80歳になっても平均20本以上の歯が残っています。この差は、予防歯科先進国では80~90%の人が予防歯科を受診してるのに対して、日本では5%程度。つまり、予防歯科先進国は「予防のために歯医者に行く」人が多いのに対して、日本は「痛くなったら歯医者に行く」という人が多いのです。
では、なぜ歯周病に罹患するのでしょうか。予防歯科の受診率が少ない、歯磨き不足などが挙げられますが、実はストレスも原因の一つ。そこで今回は、歯周病とストレスについて紹介します。ストレス社会と言われる現代、その関係性を見ていきましょう。
そもそも歯周病とは、歯周ポケットの中に侵入した細菌によって歯ぐきに炎症が起きる細菌感染症です。歯周病は初期段階だと歯ぐきにのみ炎症が起き、痛みや出血も少ないため、ほとんどの方が気づきません。
しかし、この状態を放置すると歯周ポケットが深くなり、歯を支えている骨が減少してしまいます。最悪のケースでは歯が抜け落ちてしまうこともあります。歯周病は徐々に進行するため、気づいたときには重度の歯周病になっていることも少なくありません。
歯の健康は体の健康に影響しており、たとえば、歯周病により多くの歯を失ってしまうと噛む力が低下し、食べ物をしっかり噛み砕くことができないことから胃腸に負担をかけます。また、歯周病は、心疾患や糖尿病、認知症などさまざまな全身疾患を悪化させてしまうこともわかっています。いつまでも健康でいるためにも、歯周病にかからないようにしましょう。
歯周病は軽度の段階でしっかりケアしていれば、進行を抑えられます。しかし、放置していることに加えて、歯周病を悪化させるような要因が加わると進行を早めてしまう可能性があります。その要因の一つが、ストレスです。
ストレスは心や体に負荷がかかっている状態です。ストレスの原因となる刺激を「ストレッサー」と呼び、以下の5つの種類にわけることができます。
社会的ストレッサー:人間関係、仕事、家庭など
物理的ストレッサー:暑さ、寒さ、騒音、混雑など
生物的ストレッサー:疲労、空腹、健康障害、感染など
心理的ストレッサー:悩み、不安、あせりなど
化学的ストレッサー:公害物質、薬物、酸素欠乏など
特に過度のストレスは、心や体に影響を与えてしまい、歯周病に以下のような影響をもたらします。
歯ぎしり・食いしばりは、ストレスによって引き起こされると言われており、日中に受けたストレスを就寝中に行うことによって解消しています。歯に大きな負担がかかるため、歯周病に罹患している人は症状が悪化し、歯を支える骨が急激に減少したり、歯が揺れたりすることがあります。
対策としては就寝中に装着する「ナイトガード」が有効です。歯ぎしり・食いしばりを止めることはできませんが、装着することで歯にかかるダメージを軽減し、歯周病の悪化を予防します。
歯ぎしり・食いしばりは就寝中に無意識で行われてるため、自分で気づくことが難しいです。しかし、歯や歯ぐき、お口の中の粘膜の状態を見ることで判断できます。歯科医院の定期検診で指摘された人は、積極的にナイトガードを使用することをおすすめします。
特に社会的ストレッサー(人間関係、仕事、家庭など)によりストレスが蓄積されると、気力が失われ、食事や入浴、歯磨きなどに対するモチベーションが低下することがあります。歯磨きをおろそかにすると当然、歯周病のリスクが高まり、進行を早めてしまいます。
ストレスの原因を根本的に解決することが最も良い方法ですが、なかなかそうとはいかないものです。しかし、入浴中に歯磨きを行うなど工夫することで、モチベーションを保ちながら歯磨きの習慣を守ることができます。
過度なストレスは自律神経の乱れを引き起こし、免疫力の低下につながることがあります。それにより、歯周病菌に対抗する白血球中のリンパ球やマクロファージといった細胞の働きが低下し、歯ぐきの腫れや歯周病の進行を加速させる可能性があります。
「疲れていると歯ぐきが腫れる」といった症状がある人は、免疫力が低下しているかもしれません。このような場合は、放置せず歯科医師に相談することをおすすめします。
唾液は食べかすを洗い流す作用や、むし歯菌の働きを抑えるなど、さまざまな役割があります。しかし、ストレスが溜まると、交感神経が優位になり、唾液の分泌量を減少させてしまいます。唾液が少なくなると細菌数が増加し、歯周病のリスクが高くなるのです。
私たちは日々、さまざまなことからストレスを受けています。ストレスが溜まると、体や心の健康だけでなく、歯の健康にも影響を及ぼします。
ストレスを無くすことはできませんが、規則正しい生活、軽い運動などで軽減することが可能です。
また、歯周病の予防には定期的な歯科健診が大切です。歯周病は初期段階から対策をすることで効果的に予防できます。
ストレスの解消と同時に、歯周病の予防にもつなげていきたいですね。痛みや違和感がなくても当院で受診できますので、お気軽にご予約ください。